第二十七帖 篝火

光る源氏の太政大臣時代三十六歳の初秋の物語

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注釈

第一章 玉鬘の物語 養父と養女の禁忌の恋物語


第一段 近江君の世間の噂

1.1.1 注釈1 【内の大殿の今姫君】 近江の君をさす。
1.1.2 注釈2 【ともあれ、かくもあれ】 以下「ものなめれ」まで、源氏の心中。『集成』は「娘の人柄がどうであれ」。『完訳』は「どういう事情があるにせよ」と訳す。
1.1.2 注釈3 【なほざりのかことにても】 『集成』は「先方が些細なことにかこつけて、ご落胤だと言ったにしても。本当は実子ではないかもしれないが、という含み」と注す。
1.1.4 注釈4 【げによくこそと】 以下「ことやあらまし」まで、玉鬘の心中。
1.1.4 注釈5 【親と聞こえながらも】 内大臣をさす。
1.1.4 注釈6 【年ごろの御心を】 『集成』は「離れていた間のお考えを」。『完訳』は「昔からのご気性も」と訳す。
1.1.4 注釈7 【馴れたてまつらましに】 「まし」反実仮想の助動詞、仮定の意。
1.1.5 注釈8 【憎き御心こそ添ひたれど】 源氏の懸想心をさす。
1.1.5 注釈9 【やうやうなつかしううちとけきこえたまふ】 玉鬘、源氏への親近感を強める。

第二段 初秋の夜、源氏、玉鬘と語らう

1.2.1 注釈10 【秋になりぬ。初風涼しく吹き出でて、背子が衣もうらさびしき心地したまふに】 同じく源氏三十六歳の初秋。「わが背子が衣の裾を吹き返しうらめづらしき秋の初風」(古今集秋上、一七一、読人しらず)。
1.2.1 注釈11 【御琴なども】 和琴をさす。
1.2.2 注釈12 【五、六日の夕月夜は疾く入りて】 七月五、六日の月。
1.2.2 注釈13 【荻の音もやうやうあはれなるほどに】 「さらでだにあやしきほどの夕暮に荻吹く風の音ぞ聞ゆる」(後拾遺集秋上、三一九、斎宮女御)。
1.2.2 注釈14 【かかる類ひあらむや】 源氏の心中。『完訳』は「ともに臥しながらそれ以上の行為に出られないのが、類稀」と注す。
1.2.2 注釈15 【右近の大夫】 右近衛府の将監(三等官、従六位相当官)、五位に叙せられた者。源氏の家人。
1.2.3 注釈16 【打松おどろおどろしからぬほどに置きて】 松の割木。篝火の燃料。
1.2.3 注釈17 【御前の方は】 玉鬘の部屋の前をさす。
1.2.4 注釈18 【絶えず人さぶらひて】 以下「おぼつかなしや」まで、源氏の詞。
1.2.6 注釈19 【篝火にたちそふ恋の煙こそ--世には絶えせぬ炎なりけれ】 源氏から玉鬘への贈歌。「恋」に「火」を詠み込む。
1.2.7 注釈20 【いつまでとかや】 以下「下燃えなりや」まで、和歌に続けた詞。「夏なれば宿にふすぶる蚊遣火のいつまでわが身下燃えをせむ」(古今集恋一、五〇〇、読人しらず)。
1.2.8 注釈21 【あやしのありさまや】 玉鬘の心中。
1.2.9 注釈22 【行方なき空に消ちてよ篝火の--たよりにたぐふ煙とならば】 玉鬘の返歌。「篝火」「煙」の語句を受けて返す。『完訳』は「源氏の懸想をさりげなく拒んだ歌」と注す。
1.2.11 注釈23 【くはや】 源氏の詞。『集成』は「それでは」。『完訳』は「これはこれは。驚きの発語」と訳す。
1.2.12 注釈24 【中将の】 以下「吹きたる音かな」まで、源氏の詞。
1.2.12 注釈25 【頭中将にこそ】 『集成』は以下を源氏の詞とする。

第三段 柏木、玉鬘の前で和琴を演奏

1.3.1 注釈26 【御消息】 源氏から夕霧らへの消息。
1.3.1 注釈27 【こなたになむ】 以下「とどめられてものする」まで、源氏の消息。
1.3.2 注釈28 【三人参りたまへり】 夕霧、柏木、弁少将をさす。
1.3.3 注釈29 【風の音秋になりけり】 大島本は「なりけり」とある。『新大系』は底本のままとする。『集成』『古典セレクション』は諸本に従って「なりにけり」と校訂する。「秋来きぬとめにはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる」(古今集秋上、一六九、藤原敏行)。
1.3.4 注釈30 【源中将は】 夕霧をさす。頭中将(柏木)と区別する。
1.3.4 注釈31 【歌はせたまひて】 「せ」使役の助動詞。源氏が弁少将に。
1.3.4 注釈32 【御琴は中将に】 和琴を柏木に。
1.3.4 注釈33 【譲らせたまひつ】 「せ」尊敬の助動詞。源氏に対する二重敬語。
1.3.5 注釈34 【御簾のうちに】 以下「こともこそ」まで、源氏の詞。
1.3.5 注釈35 【物の音聞き分く人】 玉鬘をさす。
1.3.5 注釈36 【心してを】 「を」間投助詞、詠嘆。
1.3.5 注釈37 【盛り過ぎたる人】 源氏自身をいう。
1.3.5 注釈38 【忍ばぬこともこそ】 『集成』は「柏木兄弟に玉鬘のことを漏らしてしまうかもしれない」。『完訳』は「玉鬘の素姓や、自分の玉鬘懸想の真相を、酔って口に出しかねない、という不安」と注す。
1.3.6 注釈39 【姫君もげにあはれと聞きたまふ】 『完訳』は「彼女は、源氏の言葉「忍ばぬこともこそ--」から、やがて源氏の口から自分の素姓が実の親にも知れようと察して喜ぶ」と注す。
1.3.7 注釈40 【絶えせぬ仲の御契り、おろかなるまじきものなればにや】 語り手の挿入句。「なればにや」は語り手の判断と想像を交えた表現。
1.3.7 注釈41 【かけてさだに思ひ寄らず】 下の「この中将は」に係る句。
1.3.7 注釈42 【をさをさ心とけても掻きわたさず】 『集成』は「めったなことに気を許して弾き続けることもしない」と訳す。
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